初代を知る人

· 日常

いつものようにお店を開き、ショーケースにて商品の整理をした。

とあるご婦人が「イカで柔らかいのあるかしら〜お年寄りが食べるの」と問いかける。

正直お年寄りが食べるにはスルメイカは肉厚で硬い。あいにくその日はスルメイカイカしか出しておらず、「うーん…イカは、おそらくお年寄りには難しいかもですね〜…」と返す。

その後またショーケースを並べながら、そのご婦人が話しかける。

「実はね、私、たまにここに来てるんだけど、ずーっと昔にここのうちの方が自転車で来てたのを知ってるんです。当時私は子供で、来る曜日や時間帯が決まっていて、引き売りに来ると近所の人が来たよーって声かけてくれて、それが楽しみで、おじさんは優しかったのよ。」と。

私の祖父を知る人だった。

「それ、私のおじいちゃんですね。あそこにいるのが息子です。」と、調理場にいる父の方を紹介し、店から父に、このご婦人が昔、祖父が引き売りしていた時のお客様だということを伝える。

父がマスクをとって、「こんな顔でしたか?」とご婦人に見せると、ご婦人は「あー!そう!この顔ですー!そっくりです!!」大変嬉しそうにされていて、嬉しくなった私もついでに「私は孫ですー♪」と言って私もマスクを外してみせる。

でも、父より祖父の方がもっとがっしりとしていて、イカつい感じで…と話されるので、ちょうど最近オンラインにアップしてもらった祖父母の若い頃の写真を見せた。

ご婦人はさらに興奮して、「あー!!!そうそう!おじさんだー!!!!」と言って大変嬉しそう。「私の母もまだ生きてるので、よく持田によるのでこの話をしたらきっと喜びます。」と言われた。

「そうなんですね。祖父の話が聞けるのは貴重なので私も嬉しいです。お母さんも来られたらきっと喜びますね。」と。

暫くしてご婦人が見せた画面を指して「これ、写真に撮って良いですか?母に見せたいんです。」というのでもちろんですと返答した。むしろ、こんな画面の写真で大丈夫かな?と思われて申し訳ない気もしたが、なんとか面影は見られるくらいには写せた。

そのあとお互いの現状の世間話などして、最後に「騒いじゃってすみません」と言いながらも大変嬉しそうに帰られたご婦人を見送った。

まだたまにこのようにうちの初代を知るお客さんが来ることがある。私の知らない祖父、私の知らないこの店の歴史があって、お店は本当に面白いなぁと思う。